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教育トレンド

家庭教育の崩壊と今後の家庭のあり方とは

家庭教育が低迷していると言われて久しい。近年、若者が突発的な事件を起こすことが多いが、そのような事件を起こした若者の育った家庭のあり方にまで言及せざるを得ない。すなわち、家庭がその人の成長してきた人となりに、大きな影響を与えているのは明白だからである。子どもにとって、最初の人間関係を築くのが家庭である。

最近、幼稚園の園長先生と話をする機会があった。昨今の保護者の方をどのように感じているのかを聞いてみた。
都内でお寺が母体の私立幼稚園の園長をしている水谷多賀子さんは、保護者に目立つことの例として、保護者会にきた母親が自分の子どもしか見ていない、ということをあげた。自分の子がいかに教師に声をかけてもらえるか、また、失敗をしないかなど近視眼的に見ている、というものだった。また、埼玉県の岩槻市の私立幼稚園の理事長に聞いたことは、保護者会でお母さんが携帯電話のメールをひっきりなしに打っているか隣の母親とおしゃべりをしていて教諭の話は上の空である、というものだった。

現代の少子化の中、子どもの数も少なく、核家族家庭は増加している。
自分の子どもを客観的に見るよい機会が保護者会や幼稚園であるはずだ。自分の子どもが
どう他の子どもとかかわりを持っているか、集団の中での自分の子どもを客観的に観察できるよい機会であるはずだが、それができずにいるのだという。

また、幼稚園に第一子をいれた年代の母親は20代から30代前半が多いのだが、幼稚園教諭は短大などを卒業したばかりで独身者が多く、子育て経験もなく保護者よりも年齢的に若い人も多いのが現状であるらしく、真正面から注意もできないのが実態である、と聞いて、暗澹たる思いがする。
常識のない親にも危機感を感じるが、従前であれば非常識であると注意する地域社会の目というもので抑制もあったが、それも消滅しているのである。

■家庭の役割と学校の役割
モンスターペアレントといわれる保護者が急増している。この実態がテレビやネットで多く報告されている。10万人のお母さんが参加する会員制サイトキャリア・マムのサイトでモンスターペアレンツに関するアンケートをとった。(調査母数は400人)その結果、モンスターが周囲にいると回答したのは約3割だった。
具体的にどのような行動をしたのか聞いたところ「通勤に間に合わないから通園バスを早くよこせ、バスは家の前まで来るものだ!と、小さい園バスを家の前まで迎えにこさせていた」「「自分のほうがちゃんと教えられるから家庭科の先生を自分に替えて欲しい」など、常識を欠く要求を学校に当ててしている例があった。

非常識な親は、担任をこえて校長や教育委員会といった権限の高いほうに直接に申し出る、ケースもある。筆者が、取材で訪れた世田谷区の公立小学校の校長は「教師は非常識な要求の保護者に悩まされてしまうと、本来の授業に身が入らない」と言っていたのが印象的である。このようなことに対応するために、教育委員会が弁護士を雇用する動きもでている。
 
■日本の家庭教育の要とは
崩壊した家庭教育の問題をどのように解決をしてゆくのかが問われる。常識ある親になるような“親教育”を進めるというのも一手だろう。自治体には家庭教育、保護者学級などの名目で親のためのシステムを備えているところもある。親を教育する、ということも必要な施策であろう。
そんな中、あえて「家でできないなら学校で配慮しよう」という試みもでている。

品川区の「しみんか」という授業では、日常の挨拶や、言葉使いなどを指導する時間を設けているものだ。同区の若月秀雄教育長は、「家庭でできないものは仕方がないから、学校でやろうということだ」とNHK番組のインタビューに答えていた。現状を放置すればますます深刻であるから、ひとつの動きであると評価できるが、これを行いつつ一方できちんと家庭教育を立て直すことが望ましい。
日本の良き習慣、指導者を敬うことや年配者に敬意をはらうというような好ましい社会慣習が価値を失ってゆくことに危機感を覚える。今まで日本人は「相手を察する」とか、
「言わなくても分かる」というような思いやりに長けた民族であったはずである。
しかし、現在は、誤った権利意識で「言ったもの勝ち」的な風潮がまかり通っている。

日本が今後どのような人材を必要とするのか、という将来的な課題でもある。家庭においては親が子どもに伝えるものは道徳的な観点のしつけ、情操観念、正義感、志の教育といった人間として最低のことであろうと思う。
家庭教育が本来の機能を回復していくことが急務である。今一度、各々の立場の人が、自らのできることから自分の役割というものを確かに踏まえることから始めるほかないのだと思う。

月刊カレント掲載 2011年 10月


 


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