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教育トレンド

小中学校の暴力行為は約6万件

<家庭の教育の重要性はますます高い>
          
文部科学省は、先頃、平成二十二年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果について公表した。調査項目(調査対象)は、暴力行為、いじめ、出席停止、小・中学校の不登校、高等学校の不登校、高等学校中途退学等、自殺、教育相談となっている。

小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約五万九千件で、児童生徒千人当たりの発生件数は四・四件(前年度四・三件)で、学校内で暴力行為が発生した学校数は八九八一校、全学校数に占める割合は二十五・二%と言う結果だった。

■学校現場では
学校内におけるいじめは、現在は、昔のように単純ではなくなった形態をとるため、指導者がよほど注意して観察しないと、陰湿に、行われることが多い。筆者が見聞したいじめの実態は、表面的にみているだけでは、看過してしまうようなできごとである。
例えば、埼玉県公立小学校の五年生のA君のケースを同校を退職した教諭に聞いてみた。A君は、いじめにあって学校を転校するしかない状態になった。

A君は幼少から難聴を抱えていた。特別学級に入るほどではないが補聴器が手放せない状態で、教室内では教師の声がよく聞こえるようにするために、体が大きいが前列に席を取ることが多かった。教師も保護者から、「A君が難聴である」と相談されていたので、それを考えて教室内では特別扱いをすることが多かった。

しかし、かえってそれがいじめの対象となった。教師が他の生徒よりも依怙贔屓している、と言い出す子どもがでてきて、「それはおかしい、先生は平等ではない」と保護者が抗議するようになった。新人だった担任は、保護者の抗議、指導方法への不満を受け止めきれなかった。結局、健常児童ではない子が通常クラスにいることがトラブルである、との結論がでたために、A君を特別支援学校に転校させることで終結した。一教諭で問題解決ができない場合の学校側の管理体制が不十分であることが見て取れる事例であろう。

また、都内の小学6年生のB子さんの場合。成績もよく、友達も多かったが、携帯電話のメールのトラブルから仲間はずれとなって、不登校となってしまった。近年は携帯電話を働いている母親との連絡手段とするような子どもも多く、学校に持参する例も多々ある。B子さんの場合は、学校から帰宅してから、塾へいく際に友人C子さんと些細なことで言い争いとなって、気の強いC子が教室でB子さんを無視する、悪評を流すということが問題の発端であった。学校外の時間でのいざこざとはいえ、学校での険悪な友人関係ができて、B子さんは仲間はずれとなってしまった。クラスで収拾がつかなくなった時点で学校では全校児童に対して、学校に携帯電話を持参するのを取りやめるように指導し、保護者会での説明を行って家庭での協力体制を敷いた。

携帯電話を当然のように使う十代の子どもへの指導、と言う観点から、家庭と学校の連携が問題となる事例である。友働き家庭では、保護者が子どもと携帯電話で連絡を取り合うことが多い、危機管理として子どもの居場所を確認するとか、母子家庭で携帯電話がないと困るなどの保護者の反発にあって保護者の賛成をとるのは難航したそうである。公立小学校の校長に聞いたことである。
 いじめの芽は、様々なことに端を発する。学校がいじめをどれくらい把握して、どういった処置をするのか、教育指導にどう生かすのかは大きな課題である。この点につき、学校側の体制が大きな鍵となる。

■学校は「アンケート調査」でいじめを認知する
ふたたび、調査に戻ると、いじめがあるかどうかを、学校が知る手段として、つまりの認知件数はどうか。よく事件が起きた時に、学校側で「いじめはなかった」と発表する学校もある。アンケート項目では、小学校三万五千九百八十八件(前年度34,766件)、中学校32,348件(前年度32,111件)、高等学校6,617件(前年度5,642件)、特別支援学校342件(前年度259件)の合計75,295件(前年度72,778件)が認知されているという結果となった。この発見のきっかけは、「アンケート調査など学校の取組」が26.0%(前年度23.9%)で最も多い、という。

いじめなどに端を発することの多い小・中学校における不登校児童生徒数は約十一万五千人(前年度 約十二万二千人)で、不登校児童生徒の割合は一・一四%(前年度 一・一五%)。不登校になったきっかけと考えられる状況は、不安など情緒的混乱23.7%、無気力21.7%、いじめを除く友人関係をめぐる問題15.2%である。
■学校は様変わり
 教育カウンセラーを三〇年している内原久美子教諭に、このようないじめや不登校の現状について、聞いた。内原教諭は都内の小学校を中心にスクールカウンセラーとして多くの学校を巡回している実績がある。
内原教諭は、課題を大きく二つと考える。「クラス規模の問題」「家庭との協力体制」である。
「今の公立学校は、どうしても、教師はクラスのレベルを全体として挙げるような指導をするために、できない子どもをできるようにする、ことに力を入れてしまう。塾通いをしている子どもにとって、学校の授業は面白くない。だいたい、各クラスには問題行動を起こす子どもが二~三名くらいはいる、教師は、その子にかかってしまうと他の子がおろそかになる。一クラスの人数を減少するのは解決の一つだと思います」
 と述べる。

ちなみに筆者が学級の構成人数のみ知らべてみると、アメリカで三〇名ほど、イギリスで三〇人、フランスではなし、ドイツで標準二四人、日本が四〇人となっている。また、家庭の教育力の問題は、多くの学校で抱える課題である。

 内原教諭が勤務する学校で、東北大震災を学習して「自分たちに何ができるか」を問いかける授業をした。内原教諭はその際、他人の痛みを自分のことのように感じることの大切さを話したのだという。が、「思いを致すこと自体ができる子どもと、他人事だと思う子どもが出ています。発言を聞いてわかります。家庭で一度話をしている子どもは、積極的に取り組もうという姿勢が強く出る。そんな場面にも家庭の影響を感じます」と言った。
 中でも感心したのは、岩手県出身の宮沢賢治の作品「雨にも負けず、風にも負けず」を披露した子どもの存在だという。「岩手県の作家、宮沢賢治がこの詩を作りました。そのような大切な岩手県を応援しましょう」と発表したという。家でお母さんに聞いて、この詩を読んで勇気をもらった、という発表だったというのである。家庭教育の大きさ、家庭教育の復興が如何に需要なことか、今こそ強く感じるものである。
(了)

(月刊 カレント 10月号掲載 緑川享子)


 


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