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教育トレンド

知識基盤社会に向けて 教育の情報化で変わる教育

<ネット時代の学びの姿とは>

情報化時代といわれるが、教育界においても、「教育の情報化」は進んでいる。
現在の社会では、日常生活、行政サービスに及ぶまで多くの場面で「情報化」が進んでいる。住民票がパソコン端末で出せるので役所まで行かずとも街中のコンビニでもとることができたり、ホームページから遠くの産地の物品が購入できたり、車に乗ればカーナビではリアルタイムに渋滞情報を得ることができて、目的地に最短で到達できる、ネットでは世界中から欲しいもの購入をすることができるなど生活の多くのことが情報化により変化をしている。教育の世界でも、情報化は進んでいる。
では「教育の情報化」とは何をさしているのだろうか。

文科省では具体的に次のような事柄をさして「教育の情報化」と呼んでいる。大きく授業の情報化と学校の情報化にわかれる。それが、いくつかのことを内包している。左記のようである。
 一、授業の情報化  =①授業でのICT*活用 と②情報教育
ICT(Information and Communication Technology)「情報通信技術」のこと
 二、学校の情報化= ①授業準備の標準化 ②校務の情報化 ③学校の情報公開

■学校の情報化
教師は授業を教えることとともに、多くの校務をこなさなければならない。その業務にパソコンを利用することでかなりの効率化が図れる。成績処理や教材・教具・備品の管理などを校内ランでつながっているパソコンで行えば、時間短縮ができ、他の教師とも情報の共有化が進む。個々人が個別に授業準備を行うのではなく、指導案がサーバー管理で一元化されていれば多くの教師が利用でき、管理も容易である。また、学校の情報が必要な教師にスムーズに流れるという利点もある。

管理でいえば、例えば、学校には必須の子どもたちの出席簿についても情報化されているのといないのではまったく違う。従前では、朝、出欠をとり子どもの登校状態を担任が調べ、それを出席簿帳に記載し、日直や当番の子どもが、教室を出て職員室の掲示板に記入しに行く、という光景が一般的である。が、同時間にそろうことはなく、一学年から六学年まであるために、児童がバラバラときて記載したり、また行事があると記載を忘れしたりするような場合もあり、全校の子どもの出欠状態を知るには時間がかかり他の校務に支障があることも生じたりする。

しかし、パソコン端末が各教室に整備されていれば、その場で欠席児童の数を確認して入力でき、一瞬にして、管理職は全校の児童の状態が把握できる。インフルエンザの流行時に全校の状態を一刻も早く知る必要がある場合や、避難訓練などの児童の安全確保を要する場合などには大変有効な手段である。

しかし、現在、公立の小学校でそのような対策をとっている学校はごく一部にしか過ぎない。そもそもパソコン機器が不足しており、各教室にはないとか、破損されるのでパソコンを教室内に設置できない等の理由により普及はしていない。自治体の経済状態にも左右される。また、学校事務処理においては、給食や児童活動のための金銭の集金や、PTAへの連絡事務などの学校事務遂行におけるパソコンの利用は、効率的、事務管理には不可欠である。

■学校の情報公開
従来、学校と家庭を結ぶものは、学級通信、学校通信などの紙媒体であった。保護者は、児童が持参する通信で、学校の普段の状態を知ることが多かった。しかし、一部の先進的な学校、特に、経済状態のよい私立学校においては、パソコンの活用により、家庭、保護者への学校生活、学業報告が、ネットを通じてスムーズに行きわたるということができる。一時、登下校時に不審者が現れて、子どもたちの安全が脅かされたことが多発したが、そういった事態にも、電子メールが役立ったと聞く。

私立玉川学園では、すでに、一〇年以上前から学園の情報化が進み、授業でネットやパソコン活用は言うに及ばず、例えば修学旅行中の子どもたちの様子がすぐにホームページに掲載されて、保護者が見ることができたり、学級通信が電子メールで送られるなどの活動が日常的に行われてきている。これは、学級担任の仕事ではなく、専門の情報処理系教員が配置されて、専念しているからできることである。

■電子黒板の普及
 情報機器のうち、電子黒板と呼ばれる大型の機器は現在、導入が盛んである。
 電子黒板は、「電子情報ボード」「e黒板」とも言われ、黒板や大型ディスプレイなどに投影したコンピュータ画面で・画面が操作でき・画面に書き込みができる・画面や書き込んだ内容を保存できる、といった機能を持つICT機器の総称である。電子黒板は、イギリスでは二〇〇七年の段階ですべての初等教育学校に平均八台、中等学校では平均二二台導入されている。が日本では、二〇一〇年段階で導入校は約一万校で全体の約二五%、数は約一万六千台だ。二〇一〇年予算では、百二十二億円が予算計上されたが、民主党政権となって削減された。

従来型の黒板にチョークという指導から、電子黒板への移行は、教育の情報化の最大の山場であろう。例えば、算数の授業で、台形を教える時に、従来ならば先生は大きな紙を台形に切った教材を用意して面積を求める工夫をしてきたわけだが、電子黒板ならばそれと同様の操作が可能である。電子黒板上で切ったり、分割移動したりが可能である。むしろ、紙実物よりも自在に色を変化させたり、大きさを縮小拡大したり、何度でも削除が可能で、どの角度からでもよく見えるために各段に理解力がますというものである。

 もちろん、保存しておいた画像データを引き出したり、白地図に等高線を正確に書いたり、直線、まる、四角形等正確に書け、書いた後移動が簡単にできるなどと、その可能性を指摘する活用事例が増加して来ている。

 文科省が、ほぼ全教室に電子黒板を導入した百十五校のモデル校を調査研究校に指定し調査した結果し四千人以上の教員に問うたところ、子どもの集中力が高まった、わかりやすい授業ができた、などの結果が報告されている。
また、「デジタル教材」への取り組みも積極的に行われており、昨年七月にはデジタル教科書教材協議会(会長:小宮山宏 株式会社三菱総合研究所理事長・元東京大学総長)が設立された。参加者は教科書会社はじめ、出版社、放送局、ゲーム会社、端末メーカー、広告会社、シンクタンクなど百三十社(十一年四月現在)の団体が参加。総務省や文科省などの官庁、学校現場、教育学を専門とする有識者らと連携し活動を展開中である。
二一世紀は知識基盤社会であると言われる。発展する高度情報化時代に必須の情報活用能力を育てるための「教育の情報化」は、試行錯誤しつつも、後戻りできない段階に突入している。(了)

(2011年6月号カレント誌 掲載 緑川享子)


 


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