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教育トレンド

子育て、教育、家庭支援策を手厚く

<教育には、将来の人材育成の視点がほしい>
                    
与党が提唱してきた幼稚園と保育園の双方の機能を併せ持つ「認定子ども園」に統合する「幼保一体化」について、先送りの方針を固めた。そもそも、民主党は平成二一年の衆院選マニュフェスト(政権公約)での目玉として掲げてきた。
政府は昨年、一一月、一〇年程度の経過措置を経て、幼稚園と保育所を廃止して、子ども園に完全統合する案をまとめた。
しかし、幼稚園関係者から反対の声が多く挙がったために、困難と判断して経過措置の期限を明示しないこととした経緯がある。

「子ども園」につき、都内の私立幼稚園の園長に、現場ではどのような扱いとなっているか話を聞いたことがある。
お寺が運営するその幼稚園は、歴史もある幼稚園で地域に根ざした教育を行っている。
幼児教育三〇年の園長は、「子ども園の存在意義が全く分からない。
教育委員会にも聞いたが、
現在の幼稚園とどう違うのか、そのようなニーズがそもそもあるのか。子どもを預けたい親は保育園に預けているから、
当園は幼稚園としてやっていくだけ」という意見だった。
従前より、幼稚園管轄は文科省であるから、幼稚園教諭は教諭としての採用となるし、保育園は保育士が子どもを預かるという立場であるとの現場意識も垣間見えた。

また、神奈川県に所在する私立幼稚園の理事長の方に話を聞く機会を得た。
ユニークな教育を行い、特色をもった幼児教育を展開する同園では、近年働く親のために、保育機能を持たせているというのが実態である、と話してくれた。
つまり、通常では午後二時くらいに保護者が迎えにきて幼稚園としては終了するが、その時間以後は、
広い施設の中で場所を移動して保育所としての機能で子どもを預かる、というシステムにしているというのである。
このようなスステムを独自に行って、保護者の要請にこたえている事例は、最近テレビなどのニュースでもよく聞くものである。
行政管轄の違いで、幼稚園の運営上からは、人的配置や管理においてかなり困難を伴うであろうが、
子どもを預けたい保護者にとっては切実な問題である。
経済不況で働かなければならないという各家庭の事情もさることながら、人材の育成や女性の就労支援は
人口減少時代には重要な意味をもつ。女性の社会進出が進む時に、家庭か仕事かと二者択一を迫られる社会では、
安心して子育てができない。

■少子化と先進国
海外の少子化が問題視されているが、財源もないままに一時的に現金を支給する「子ども手当」には、結果,将来に禍根を残すだけのことだろう。
だいたい、一時金をもらって根本的な問題が解決するとは思えない。ならば、より多くの保育施設の建設、または、統廃合で空き教室になった多くの校舎を保育施設に転用するとかの施策があってしかるべきであろう。保育所は、経費の90%を補助金に頼るような仕組みとなっているために、新規の参入が難しく、また施設の供給不足は慢性的であると聞く。
先進国の多くが少子化高齢化問題に直面しているが、フランスは、合計特殊出生率が二.00と高いことで知られる。幼稚園の多くは公立で、子どもが三歳になるまで所得に関係なく無料で預けることができる。職場環境も整っており、育児休暇は三年間間取得できこの間は無休であるが、休暇取得前と同等の職場に復帰させることが義務づけられている。
経済協力機構(OECD)の統計によると、フランスの家族政策に関する予算は約五一八億三千九百万ユーロ(約五兆九千億円)で国内総生産(GDP)の三%である。日本は、約四兆七百億円でGDPの0.八一%で、OECD加盟国の二.四%を下回っている。フランスは歴史的に見ると、二〇世紀初頭に人口減少が見られその後、出産や子育て、教育にかかる数々の家族手当が確立されて家族に対する手厚い政策が施行されて現在に至っている。
「人口は国力」との基本政策があるということだ。
翻って日本においては「子育てにお金がかかる」と多くの人が言っているのが、日本の現状であろう。

筆者の知人で、子どもを医者にしようとしている例が三例ある。まず親が外科医をしているA家。子どもは現在中学生。家庭教師に支払う月謝は月額二十万円程度である。小学校から家をつぐために医者にすることは必然的な進路であって、そのために家庭教師をつけており、年間では四百万円以上を学校外の塾や家庭教師、教材教育費用に使う。親が通常のサラリーマンであるB家では、子どもが医者になる受験費用もさることながら年間の学費が賄えなさそうなので今から生命保険の取り崩しや祖父母への援助などを考慮している。私学では授業料も高額なために公立大学が希望であるという。また、C家では、保護者が公務員で一定の金銭的ある程度の貯蓄はしているが、親類に医者や医療関連者もいないために受験知識もないので予備校や著名塾に通学させる金銭もかなりの高額になって家計が立ち行かなくなったので母親がパート勤めに出た。
 「子育て」から外れてしまう話題であるが、筆者が言わんとすることは、家庭の経済状況いかんによって、教育を受けることの格差がかなり鮮明に表れるという現実である。
経済格差というのは昔から存在した、そして、教育格差、学力格差という言葉が近年かなり多く聞かれる。多くの人が、不公平さと感じ取り、子どもの代にまで影響を及ぼすかもしれない事態にと発展した。

■フィンランドではすべての学校は無料である。
教育施策は、徹底した教科内容の自治体への分権化、中央政府は全く干渉をしない、個々人の能力に応じた進度、習熟度の調整、教員の高い資質、等が実現しており、それが近年の世界トップの学力効果となって表れている。表面だけで見てはいられない。注目すべきは、フィンランドは、この教育システムを一九九〇年代の不況の最中において実行したという事実である。教育担当省は、次世代の育成のためにコスト削減ではなく教育費用の倍増策を採用したのである。
教育投資倍増が生み出す利益が,それをしなかった時に発生する失業者や無業者に対して必要な社会的支援を上回ることをデータとして得て、教育費倍増への政策の転換を実現したという。ここに,国民および財務担当者の見識が存在するものだ。

まず、何かと話題を提供している「子ども手当」は、1年間の時限立法であるから、平成二三年三月末で、与党は制度設計、および支給要件を見直した法案を通常国会に提出した。
野党の反発は大きく、財源についての保障もないままなので、これが不成立の度合いは高い。法律が失効すれば四月以降の支給はなされず、以前の児童手当の復活など、事態は混乱に陥ること必須である。現状でも、地方自治体の半額負担を盛り込んでいることから、反発を強めている自体体の長も多い。
 九都県市首脳会議の構成市である横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市は揃って新年度予算案において地方負担計上を拒否している。テレビや新聞での発表もされているが、その内容をいくつか紹介する。
神奈川県は、「現在、自らの地域のことは自らの意思で決定し、その財源・権限と責任も自らが持つという地域主権型社会の実現をめざす「地方分権改革」が進められていますが、こうした政府の中央集権的な対応は、この地方分権改革に反するものです」として子ども手当には反対する。

子ども手当の県負担相当額を主な財源として、平成23年度に県と市町村が共に地域の実情を踏まえた将来につながる「新たな子育て支援施策」を展開する」ということで、県負担を不服として、県独自の子育て策を提唱している。その予算は、約一六五億円である。県の実施事業は、地域ニーズにあった保育所等の整備、幼稚園の整備、保健医療サービスの充実などとなっている。

(2011年3月 月刊カレント誌掲載 緑川享子)


 


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