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教育トレンド

科学技術立国であったはずの日本 ~ノーベル賞級の学問はどうなるだろうか?~

■21世紀は福祉と教育理立国へ

「国の果たすべき役割として、一九世紀の近代国家は治安、防衛、二〇世紀は福祉、二十一世紀はプラス教育立国です、しかもこれからの時代は、教育というものは何も一八歳までの若い人たちだけのことじゃない。技術革新が進んで今の仕事の半分がなくなったら、四〇歳、五〇歳、六〇歳になってもずっと教育の場が求められる」
 これは「財界」誌のインタビュー(二〇一七年六月号)で衆議院議員下村博文氏が語っていることを抜粋したものである。国際化が進展の中、日本は急激な少子化を迎え、若年人口が減少しつつある。「教育立国」の理念は、どの方向を目指しているだろうか。
これまでは資源小国である日本が、科学技術によって近代化をなしえたのである。しかし、その科学技術が、危機感を持たねばならない事態に陥っている。
また、思い出すのだが、ノーベル医学・生理学賞の受賞者、大隅良典さん(京大名誉博士)が、受賞時に訴えたことは、日本の研究環境の悪化を憂えるインタビューである。「日本の大学の状況は危機的で、このままいくと一〇年後、二〇年後にはノーベル賞受賞者が出なくなると思う」。これらを裏付けるかの様に、日本の科学力の低迷を指摘する調査結果が、近年相次いで公開された。文部科学省科学技術・学術政策研究所がアメリカの論文のデータベースを基に世界百カ国以上の科学技術の論文の数を調べたところ、日本の大学や研究機関が発表する科学技術の論文の数は、一〇年前に比べて六%減少した。世界で、科学技術予算が多い、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、中国、韓国の七カ国でみると、論文数が減ったのは日本だけ。中国は一〇年前に比べ四倍以上に、また韓国も二倍以上に増加。日本はアメリカに次いで第二位であったが中国、ドイツに抜かれ第四位と落ち込んだ。

■OECD調べでは公的支出は最低
さらに、経済協力開発機構(OECD)が二〇一四年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める小学校から大学までに相当する教育機関への公的支出の割合を公表した結果がある。日本は三.二%で、比較可能な三十四カ国中、最低である。OECD平均は四.四%で、日本が最低となったのは十二年調査以来。これは、教育支出の多くを個人の家計が負担している日本の現状である。公的支出割合の中で、高等教育を見ると日本は三十四%で、OECD平均の七〇%を大きく下回っている。
 
■「将来の国立大学」はどうなるのか?
全国立大学を会員とする国立大学協会(座長:永田恭介・筑波大学長)は、本年の一月に「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」を公表発表した。
中央教育審議会は、一八歳人口減が進んだ二〇四〇年ごろの社会を見据えて、大学など高等教育の「将来構想」を打ち出した。提言は「日本の高等教育の現状をのべ、社会構造の変化から我が国の将来への提言、実現に向けた方向性を述べる」とある。内容の概要を以下記載する。
<国立大学の将来性>
(一)教育
○学部・大学院教育においては、学士・修士・博士などの学位に着目したプログラムの体系 的整備と学生の大学間の流動性の向上、大学間や地域・産業界とも連携した教養教育や学 生の主体的学習を含む実践活動・課外活動の充実を推進する。
○ 大学院については、各大学の状況に応じ規模の拡充を図り、産業界と一体になった人 材育成、社会革新をリードする自然科学系大学院はもとより人文・社会科学系大学院の強 化、公私立大学を含む大学教員の養成、社会人を含む入学者の多様性拡大と流動性向上。
○ 社会人の学び直しの機会を提供するリカレント教育。大学院において、学術研 究の基礎とともに実践性を重要視したプログラムを積極的に提供する。
○ 初等中等教育の教員養成の高度化に対応するため教員養成課程については、広域エリア内 での国公私を越えた連携・統合も含めて検討を行う。
○ 入学者選抜については、高大接続システム改革を着実に実現するとともに、国立大学全体 としての統一的な入学者受入れシステムを構築することを目指した抜本的な改革。
(二)研究
○ 各専門分野の深く先鋭的な基礎研究に加えて、学部・研究科等の枠を越えた柔軟な組織を 整備し、学際・融合分野の研究を推進する。
○ 若手研究者を積極的に採用
○ 女性研究者について、積極的な 採用・登用を推進する。
○ 民間企業の研究者や海外の優れた研究者を、年俸制やクロスアポイントメント制を活用して積極的に招聘・採用する。
(三) 産学連携・地域連携
○ 教育面においては、インターンシップなどにより学生に幅広い学びの場を提供。
○ 教職員の産業界との人事交流を推進し、産学連携共同教育・研究への意識を高め、更に大学マネジメントに関する能力開発を進める。
○ 研究面においては、特に産学連携共同研究について組織ベースを基本とし、大学としての 戦略に基づいた大規模で長期間にわたる継続的な共同研究を推進する。
 以上のようである。

■国立大学の法人化
二〇〇四年以前は、国立大学は、国の行政組織であり、財政や人事など制度的な制約が強かった。法人化の主たる目的は、組織・経営面での柔軟性や自律性を高め、各大学が自主性を発揮して特色ある研究教育を活性化させることであった。法人化後、各大学の経営の基盤的資金として国からの運営費交付金が拠出されているが、毎年、前年比で一%ずつ減額されている。この運営費交付金の総額は一〇年度まで減少が続いてきた。
文部科学省は一三年度から、法人化の主目的である「各大学の強み・特色・社会的役割」という考え方を見直し、国立大学のミッションを再定義することにした。
さらに「国立大学改革プラン」を策定。各大学の機能強化を推進するため、第三期中期目標期間(16-21年度)において、「各大学の強み・特色を最大限に生かし」「自主的・自律的な改善・発展を促す」仕組みとして、各大学の取組の成果に基づいて、「教育研究組織や学内資源配分を恒常的に見直す環境を国立大学法人運営費交付金の配分方法などにおいて生み出す」との方針を掲げた。
こうして一五年、文部科学大臣決定として公表されたのが「国立大学法人などの組織及び業務全般の見直しについて」であった。国立大学に速やかな組織改革を求め、「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、一八歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」とした。
国立大学は、将来の国の充実のため、社会、経済界の変革や成長分野を切り開く力あるイノベーションを創出できる人材を育成する機関として、運営基盤を充実させて高度の教育を実現する場である。大いなる改革の実効性を注視していきたい。
(了)

 


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