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教育トレンド

グローバル時代の英語教育が加速 東京オリンピックを契機に

■ 東京オリンピックに向けて
 新たな日本を国際社会に向けて発信できるチャンスが、二〇二〇年の東京オリンピックである。教育の世界での国際化教育、英語教育の進展のチャンスでもある。
 オリンピック開催を一つの目安に、文科省がこの四月から推進しているのが「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」である。内容を学校別におおまかにまとめると以下のようである。

    ◎小学校における英語の強化=専科教員の指導力の向上、小学校学級担任の指導力の向上、研修用教材の開発・  提供、教員養成課程・採用の改善・充実
     ◎中学校、高等学校における英語の強化=英語教員の指導力の向上、外部検定試験の活用(すべての英語科教員に英検準一級、TOEFLiBT80点以上の英語力を確保)
    ◎外部人材の活用促進=外国語指導助手(ALT)の配置拡大、地域人材の活用促進
    ◎指導教材の開発=教材整備、モジュール(*後述)指導用ICT教材の開発整備
    これらの各学年ごとの段階を通じて、英語教育を充実し英語力の向上を目指す、とする。そして、高校卒業段階で、英語検定試験の二級から準一級、等を確保する、

というものである。
 かねてより、英語教育の必要性は言われてきたものだが、ここにきて加速する現実的な要請が高まったと言える。
*モジュール指導とは、短時間学習のことで通常の指導時間は四十五分だがモジュール(十五分)の時間を標準指導時数には含めないが、英語学習に当てるものを言う。計画では一時間目のはじまる前の朝の十五分、給食後の十五分を充てるなどして、発音や聞き取り練習をする、となっている。
 この実施につき課題はというと、語学は反復学習が必要なので短時間でもできる学習と言うのは確かにあるのだが、すでに飽和状態である現指導時間の中に本当にいれることができるのか、が現場の悩みであろう。
通常の学校では朝の始業前の時間には、多くの学校では、学級の時間や漢字練習、朝の読書、算数の計算練習等ですでに使っているから、その中に英語モジュール学習を組み入れることとなる。文科省案では、月曜から金曜を、漢字、計算、読書、英語、漢字と割り振り英語を入れることを提案している。
新規に取り入れる学習指導には、それにみあった適切な指導書、目安の教材、教具が必要なわけで、その充実が要となろう。

■日本人としてのアイデンティティ
英語教育とあいまって必要なのが、日本国の歴史・文化・伝統、国語に関する教育といえる。「国際化」といっても、英語教育をすることとだけではなくその表裏一体として、国際社会を生きる日本人としての自覚を育む必要がある。
そのための教育、方策があるべきだ。
これは、◎伝統文化に関する学習内容の充実として、平成二十六年度概算要求に乗っている。内容は、そろばん、和装、和楽器、美術、文化と武道の必修化、および、日本の文化遺産の学習を新設すること、授業時数の増加、中学高校では、近代史の授業時数の増加となっている。

■東京都のオリンピック補助教材
このような中、先陣を切って東京都では、オリンピックに向けた補助教材を都内の小学校、中学校、高等学校に配布した。
東京五輪の意義を分かりやすく解説したもので、学習読本とDVDの映像教材である。スポーツの意義、精神、目指すもの、歴史、等を写真も織り交ぜて冊子にしたもの、DVDでは、前回のオリンピックから二〇二〇年の大会に向けた歩みや歴史を、映像を通して学び、考えるものとなっている。
東京や日本の伝統、歴史、文化を英語で発信する力、外国人とのコミュニケーション場面、等も学べるようになっている。
では実際の小学校の現場で、英語教育がどのようになされているか、筆者は取材を行ったことがある。
都内の公立小学校で、六年生の英語の授業。英語指導はネイティブのカナダ人講師で、サブに日本人だがバイリンガルの帰国子女の講師の合計二名で一クラス三十五人を指導する。担任は、指導というよりは学級の児童の様子を見て補助していると言う位置づけだった。
床にすわり、皆で英語の歌を歌い、次にとなりの人と挨拶を交わしたり、簡単な文字カードを教師が示すと、それを挙手して答える。英語の単語が書かれている。
犬=dog , りんご=appleといったカードが何十枚も用意されている。
英語のレベルは、簡単な挨拶や朝晩の言葉、友人との遊びの場面、食事の時の作法などで、話す、発音、に焦点があたっており、アルファベットを書く指導まではしていなかった。
英語が、テストなどで評価される科目ではないので、この遊びと身体をつかっての歌などは公立学校の多くで見られる光景である。
担任に授業後に話を聞いたところ、「クラスには学校外で英語塾に通学している児童が三十五人クラス中、九人ほどいるとのことで、今後は増えていくと思う」とのことであった。
学外の英語教育の塾などが、今後の小学校の英語必修化にあわせて
増加傾向である。

■英語力のない日本人
アメリカのフォーリンプレス誌は、「日本人の英語力がない点が、オリンピックに向けての国際社会つくりに課題である」、と述べている。
筆者は、中学校に入学してからやっと「英語」学習をした年代である。
日常生活で外国人などに会うこともほとんどなく過ごしていた。中学校時代に留学した生徒がいて、2年の留学が終わり帰国した時、アメリカの話を聞く会が催され、全校生徒が体育館で興味津々で外国の話を聞いた、ということがあった。
そのような昭和の時代とはまったく異なる豊富な英語学習環境がある現代に身をおいているにもかかわらず、日本人の英語力は、諸外国から遅れをとっている。アジア諸国の英語教育からも慎重姿勢があって相対的に追い抜かされている。
語学の習得には、様々な要因が作用する。国自体が隣国に接しているような国であれば言葉の交流もあり、外国人が多くいれば言葉に接する機会も多くあったろう。日本人の奥ゆかしい態度、特性、個性というのも学習に影響するし、島国であったことも、語学に関しては拡大はできない環境にあった、等々英語に関しての多くの問題点は多々存在する。
が、それらを超えて、現状を見るに、国際化の中で生き抜くためにはこの壁を乗り越える必要がある。国連等の国際的機関で発言力のある人材は同じアジア人でも日本人ではなく中国や他のアジア勢が優勢であるとなると、政治や経済面、社会的立場で国際的なハンディを背負ってしまうこともあると危惧する。
東京でのオリンピック開催は、またとない英語力、国際化教育の機会ととらえ、このチャンスを教育にも生かしていくべきであろう。(了)

 


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