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教育トレンド

 人工知能の進展で約49%の職業がロボットにとって代わられる?

◆20年後の社会構造と今の教育目的
 
「現在の職業の約半分が人工知能で代替される」という研究調査が発表になった。
これは株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区)が、英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン教授とカール・ベネディクト・フレイ博士等との共同研究「“二〇三〇年”から日本を考える、“今”から二〇三〇年の日本に備える。」の一環として行った研究である。日本の六〇一種類の職業(後述*)について、それぞれ人工知能やロボット等で代替されるという内容であるつまり、今から一〇~二〇年後には、日本の労働人口の約四十九%の職業が人工知能・ロボットに代替されるとのことである。

 単純労働、個性なき側面の強い労働力が置き換わるであろうというのはうなずけるが、専門性が高いと思われている職業でも、機械が代替できる職業もある。
 こういった推計の中に、今、目指すべき教育の基礎が隠れているのではなかろうか。
今のかくあるべし、という教育で育つ子どもたちが十年から二十年後に社会に出たときに、いったいどのような力を付けていればより良き社会の一員になれるのか、否、そういう世の中を創れる存在になっていられるか、の分岐点だからだ。
すでに、現在でも紙に書かれた内容を、暗記してテストの点数が良い人ということでは、発展する時代に通用しない若者が増えているのが現状なのである。そしてそのひずみが、教育現場の荒廃にも影を落とすなど多くの課題を生んでいる。学校での基礎力の育成は、つまりは上級学校へ進む際に選考基準である入試制度の壁がある、など社会変化の中での教育ということで絞殺すべきは山のようにある。
 ここで、調査ではどのような職業を代替性の高い職業、低い職業の一覧から、概観してみよう。

◆人工知能に代替される職業?
*代替性の高い職業
IC生産オペレーター、鋳物工 医療事務員、通信機器組立・修理工、貸付係事務員、CADオペレーター、教育・研修事務員、金属材料製造検査工、金属熱処理工、計器組立工
ゴム製品成形工(タイヤ成形を除く)、産業廃棄物収集運搬作業員、自動車組立工、出荷・発送係員、診療情報管理士、生産現場事務員、清涼飲料ルートセールス員、ホテル客室係、電気通信技術者、電算写植オペレーター、非破壊検査員、電子計算機保守員(IT保守員)、郵便事務員、有料道路料金収受員、列車清掃員など

*代替性の低い職業
アートディレクター、アナウンサー、アロマセラピスト、犬訓練士、インテリアデザイナー、映画監督、学芸員、教育カウンセラー、クラシック演奏家、経営コンサルタント、芸能マネージャー、ゲームクリエーター、外科医、言語聴覚士、工業デザイナー、広告ディレクター、作業療法士、産婦人科医、歯科医師、児童厚生員、シナリオライター、社会学研究者、声楽家、精神科医、獣医師、柔道整復師、ジュエリーデザイナー、小学校教員、助産師、美容師
心理学研究者、人類学者、スタイリスト、スポーツインストラクター、美容師、評論家、図書編集者、内科医、日本語教師、ネイル・アーティスト、バーテンダー、俳優、はり師・きゅう師、放送ディレクター、報道カメラマン、法務教官など。
同研究所の分析ではこれを 「芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があります。一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できました」としている。 
 
実は、類似の研究としては米国の研究者キャシー・デビッドソンが「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもの65%は、大学卒業時、今は存在していない職に就くだろう」という予測を平成二十三年に発表して話題となった。考えてみれば、今から二十年前に、町から公衆電話がなくなり一人一台ずつスマートファオンを持ち歩き、いたるところに携帯ショップがあってショップでは端末操作する職員がいて、小学生が造作もなくパソコンでネット検索する、といった社会状況になると想像できる人がどれほどいたであろうか。普通の人がPC操作したドローンを首相官邸の屋上に飛ばすことを想像できたであろうか。パソコンで入力し買い物をすれば玄関に品物が届くという時代を、何十年前に予想できたであろうか。人が運転する車は事故を起こすが、無人自動車が安全に運行するような世の中になっていくという実証実験報道も珍しくはなくなっている。
これからを生きる子どもたちにとって、必要なことは単に知識・技能を覚えることではなく、習得した知識・技能をどう活用するかであり、多様な人々と協働して何かを成し遂げる能力、
人工知能では成し遂げられないような力、を持ち得るかということが焦点となる。 

◆文科省の指導要領
そこで文部科学省では、学習指導要領の改訂で知識などをどれだけ覚えるかという「コンテンツベース」の教育から、どんな資質・能力を育てるのかという「コンピテンシーベース」の教育への転換ということである。言い換えれば、知識・技能を活用するための論理的思考力・判断力・表現力などを重視することや、「何を教えるか」と同時に「どのように学ぶか」を中心に据えたアクティブ・ラーニングといった学習行動につらなることであろう。

◆神奈川県調査「一人親家庭と子どもの教育」
 子どものどのような教育をうけさせることができるのか、日本では家庭にその大半の責務が負わされている。家計費に占める教育費用の過大さ、国の教育予算の低さが言われて久しいが、
近年の課題として「子どもの貧困」が大きくクローズアップされている。
背景を探ると、時代的変化、家族の在り方の変化が保護を必要とする子どもにしわ寄せがきているという実態が浮かぶ。
先ごろ、この問題に積極的に取り組む神奈川県が「ひとり親家庭の実態調査」を実施した。

 これに児童扶養手当受給資格者六百五十一人の回答があった。過去一年の年収は二百万円未満が約三十六%、三百万未満が約三割。年収公共料金の支払が滞ったことがある、年金や介護保険の支払も遅滞しているとの回答。また、自由意見では「大学進学へのサポートができず子どもの貧困の連鎖につながりそうで不安」「学童クラブで英会話や学習をみてほしい」「多忙で弁当が作れない、中学校の完全給食実施希望」「非行予防で子どもの居場所つくりを」などがでた。現在の切実な課題である。
 変化の厳しい時代を迎え、どうやって今後の社会を生きる子どもを育成するのか。これからの人材を育成する観点で、せめて義務教育段階では基礎基本の教育を受けることが保障される教育施策がいま、求められる。
(了)


 


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