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教育トレンド

成人年齢の引き下げで、18歳で選挙権

自己肯定感が低い日本の高校生
 ~日本・米国・中国・韓国の四か国調査から~

「主権者教育をどう進めるか」-先頃、NHKのニュースで、公立高等学校の社会科教諭が生徒たちにどう教育をするべきかにつき悩んでいる、というニュースをやっていた。今年六月に可決、成立した改正公職選挙法で、選挙権年齢が一八歳以上に引き下げられるのを受けて、新たに約二百四十万人が、有権者として加わることとなったことを受け、教育現場でも、従来まったく意識のなかった十代への教育を考えざるを得なくなった。

成人年齢の引き下げにより、選挙権をもった若者の声が政治に 反映されるようになるとの前向きな意見はその通りであるが、その一方では、政治や選挙への関心をどう高めるのかなどの課題があって当然である。「主権者教育」が待たれるところである。

なぜなら、成人年齢については、以前より議論がなされており、賛否両論かまびすしかったのだが、世界の潮流をみれば成人年齢を十八歳とする国はかなり多い。その背景には、先進国では、学生運動によって若者の政治的関心の増大、内政への変革などがあったからである。

そこで世界に目を向ければ、OECD(経済協力機構)に加盟する三十ヵ国の中でも、二十歳を成人とするのは日本だけで、他の国は十八歳を成人と定めている(韓国は十九歳成人、アメリカは州によって成人年齢が異なるが、四十五の州で十八歳成人、選挙権は全米で十八歳となっている)。 十八歳から選挙権を認めている国は多く、ことにオーストリアは八年前に国政選挙で選挙権を十六歳に引き下げたという経緯がある。

成人年齢を変えるとなった場合、「喫煙防止法」「飲酒防止法」等々、三百に近い法律、政令等の関連法案の変更も必要なのだが、選挙で投票ができる政治参加はその社会への影響や意識変化に大きく影響がある。

昨年十二月の内閣府の調査で、父母の親権が及ぶ範囲を現行の二十歳未満から十八歳未満に引き下げることに、約七割が反対という結果がでていたのは、日本の高校生の現状は世界的に甘やかされていると感じるものだった。

■四か国比較してみた高校生像

そのような中、気になる調査が発表された。
国立青少年教育振興機構の「高校生国際比較調査」の結果である。この調査は日本・米国・中国・韓国の四か国の高校生の意識の国際比較である。調査は、体験活動、インターネットの利用や意識、勉強について、友達に求めていること、親子関係、 信頼感、人生目標、社会や国への意識、自分について、生活などへの満足感 の十項目について調査したものである。その結果を概観する。

① 体験活動について
「家族や親族のお墓参りをしたこと」「野菜や果実の栽培や収穫などの農作業を体験したこと」があると回答した割合は高いが、「弱い者いじめやケンカをやめさせたり、注意したこと」、「体の不自由な人、お年寄りなどの手助けをしたこと」と回答した割合は他の三か国と比べて最も低い。

② 勉強の目的について
「将来、希望する仕事に就くため」「社会の役に立つ人間になるため」という回答が他の三か国に比べて高い。将来希望する学校段階については、「四年制大学まで」と回答した割合が高く、「大学院まで」と回答した割合が他の三か国に比べて最も低い。

③ 親子関係について
「親の期待にプレッシャーを感じる」「親を尊敬している」「どんなことをしてでも自分で親の世話をしたい」という回答が他の三か国に比べて最も低い。

④ 人生の目標について
「自分が幸せと感じること」と回答した割合は、他の三か国と同様に高い。「お金持ちになること」「高い社会的地位につくこと」と回答した割合は、他の三か国に比べて少ない。

⑤ 社会や国に対する考え方について
満足度は他の三か国に比べて最も高い。「いまの社会は貧富の差が大きい」と回答した割合は他の三か国に比べて最も低い。一方、「国の発展は私個人の発展とつながっている」「国のために尽くすことは大切だ」と考えている者の割合は他の三か国に比べて最も低い。

⑥ 自分について(自己肯定感等)

「人並みの能力がある」「体力に自信がある」「勉強が得意な方だ」といったことに肯定する割合は低い。また、「自分はダメな人間だと思うことがある」といった項目への肯定する割合は高い。

⑦ 体験活動と自己肯定感について
四か国とも自然体験の豊富な者は、正義感・思いやりに基づく行動が多く、自尊感情などの意識が強い傾向が見受けられる。また、弱い者いじめなどを注意したり、お年寄りなどの手助けをしたりするなど、正義感・思いやりのある行動を多くした者は、自尊感情が強い傾向が見受けられる。

日本の高校生は、ほかの国の高校生に比べて「自己肯定感」が低いことが、結果としてでている。つまり自分を「ダメな人間だ」と思っている日本の高校生は七割以上に上っており、この教育の必要性を感じる結果だ。

内容を詳細にみると、決定的な違いが表れているのが「自分はダメな人間だと思うことがある」という項目これに「そう思う」(「とてもそう思う」と「まあそう思う」の合計、以下同じ)と回答したのは、日本約七三%、米国約四五%、中国約五六%、韓国約三五%で、日本の高校生の割合が突出して高い。

「私は人並みの能力がある」「私は、勉強が得意な方だ」「自分の希望はいつか叶うと思う」という項目でも、「そう思う」の割合に大きな違いがでた。なぜ日本の高校生はほかの三か国と比べて、極端に自己肯定感が低いのだろうか。

■土台の義務教育年代

自己肯定感を育てる年代に、必要な教育土壌があることが必須である。
つまり、義務教育年代に、自身への自信を培うために・学校生活の充実、家庭での居場の確保、豊かな体験学習、適切な教育者との出会い、良好な親子関係、友人関係といったごくごく通常の生活での満足感がその人に自己肯定感を植えつけるのである。

各発達段階でこういった肯定意識を身に着けた子供は、高校生になっても、その土壌を持つことができるのである。
高校生の調査は、そこに至る年代までの教育が、いかに大切なことであるかの査証である。
「教育再生実行会議」が今年の五月に「これからの時代を生きる人たちに必要とされる資質・能力~求められる人材像~」という提言を発表している。以下のようにである。
 「これからの未踏の時代に、社会的・職業的に自立し、たくましく生き抜いていくた
めには、想定外の事象や未知の事象に対しても、持てる力を総動員して主体的に解決していこうとする力を培っていくことが必要です。
そのためには、まずは、基礎となる学力、体力を土台としてしっかり身に付けることが不可欠です。基礎的な知識・技能は、いつの時代にあっても、おろそかにすることがあってはなりません。特に、高等教育を目指し、高度な専門教育を受けて、将来、社会人になる場合、その基盤として、文系にも必要な数理的思考法や、理系にとっての人文・社会系の素養など文系・理系を問わない幅広い教養を備えておくことが必要です。同時に、全ての人が学術研究の道を目指す必要はありません。職業人を志す人には、実社会での活躍に必要な実践的な知識・技能を修得することが求められます。
専門高校や専修学校での職業教育をもっと評価していく必要があります。」
実効性ある教育施策が、継続的に今後も行われていくことを願うものである。     (了)


 


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