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教育トレンド

国際化の時代の英語教育とは

小学校の新しい学習指導要領で5、6年生の外国語活動(英語)が必修となって、英語教育が新しい展開を見せ始まった。
経済や政治問題、環境問題等々は言うに及ばず教育の世界でも、国際化を意識せざるを得ない状況にある。日本の英語教育は長い間、改革の必要性が言われ、議論がなされてきたが、平成23年度から小学5年生から週1コマ(45分授業)が必修となった。移行措置として今春から準備が整った学校では導入することとなった。また改定学習指導要領では、高等学校の英語の授業を、「英語の時間はすべて英語で行う」という指導となって、英語教育は学校での授業ということで認知をうけることとなった。
英語教育の課題と今後の指針についてまとめてみた。
■現場での英語学習
これまで小学校の英語は“総合的な学習の時間”の中で国際理解教育の枠内で指導されていた。
必修化ということは、独立した英語学習の時間が年間35時間設けられるということだ。したがって総合的な学習の時間は現在の110時間から70時間に減少し英語学習の時間に回される。
都内、品川区の公立小学校の英語の授業を参観する機会があった。
まず、指導者としてはALT(日本の学校における外国語授業の補助を行う外国語指導助手Assistant of Language Teacher=ALTの略語。以前は英語指導助手Assistant English Teacher=AETと呼ばれた)と呼ばれるネィティブ教師と指導補助(英語の話せる日本人)と、担任の合計3人で1クラスの指導を行う。
3年生以上への指導内容は、歌、チャンツ(音楽に合わせたリズム遊びのようなもの)、カード読みなど、体を使う遊び主体の中で英語での挨拶や簡単なやり取り、物の名前などを覚えていくやり方である。
例えば、6年生の授業は、動物の絵が描かれたイラストを見ながらALTが聞いて子供たちが答えるというものだ。
 「What  is this?」(これは何ですか?)とALTが聞くと
 「Apple」(リンゴ!)と子供たち。
簡単な綴りの単語カードが用意されており、表には英語のスペル、裏には日本語が書かれてある。発音はALTが主体で指導するが、全体を見渡しているのは担任で、理解をしているのか、など子供の把握には通常授業をしている担任が勝るからだ。指導の後で子供たちは「学習シート」に授業の成果、感想、覚えたことなどを記入させて定着を図る、という指導形態であった。
学校全体の分掌では、英語推進委員として、音楽専科の教師が担当となっていた。
今まで、教員養成大学でも英語指導の教育を受けていない教師が指導するようなこととなった上、担任外と言われている専科教師まで巻き込んでの事態となった。そこで各地では研修会が開かれたり、民間の英会話学校に駆け込む教師がいるなど、不安も残る。年配教師はそもそも英語教育については消極的であること、また教師の多忙さに拍車がかかるなどでの意見は根強くあるからだ。

■英語は国際化時代のコミュ二ケーションツール?
過日、「英語教育」をテーマに特集を組んでいたNHKの番組を見た。横川電機の事例が紹介されていた。同企業が海外工場と仕事をするために、英語を使うことが絶対的に必要になり、会計部署の人も英語辞書片手にして英語のメールを書いたり事務を行ったりする場面や、新規プロジェクト会議をテレビ会議で行ったりする場面等が放映された。
 一昔前ならば、海外担当部門があり帰国子女や語学専門の人が英語翻訳や通訳を一手に引き受けていたものなのだが、個々人が英語でコミュニケーションをとらなければ仕事が進展しない、というものだった。
 40代の部長クラスの方が、テレビ会議の向こうのインド人と会議をしている様子があった。流ちょうといはいえない英語ではあるが、不明点はその場で聞き返したり、インド人の方もゆっくりと話す等配慮しているようで会議は進んだ。最終的には会議議事録を作成して数字や内容を交わして確認する、という流れであった。
識者として登場したのは、上智大学の吉田研作教授とお茶の水女子大の藤原正彦教授だった。吉田教授は、英語推進論者であり行政の審議会委員などを歴任している。金融も経済も文化もすべてのことが日本国のみでは完結しないような状況であるのが現代であって、自分の意見も言えないようなことでは今後、日本のマイナスである、と述べていた。一方、藤原教授は話す内容が大切であってまずは日本語をしっかりとすることが肝要だと述べる慎重論者である。
筆者が、英語教育につき取材を始まったのは、今から10年ほど前である。民間語学学校の経営者、学校の現場、知識人、帰国子女、大学での語学教育者、幼児教育の現場等々の方々に英語教育につき話を聞いてきた。が、この間、時代は、賛否議論の段階を過ぎて、導入するのは当然のことであって、如何に適合した教育ができるのかという段階にきていると実感する。
■中国、韓国の英語教育とは
近隣の中国、韓国では小学校3年から英語学習が必修となっている。
韓国では1997年に3年から英語が必修となった(文部科学省国際課)。3、4年生は40分授業で週1コマ、5、6年生で週2コマ。小学校英語は聞く話す中心だが、4年生では読む、5年生では書くことまでが学習内容だ。中国は2005年から必修化。20分~40分授業の組み合わせで週4コマ以上学習(都市部と農村部の学校差がある)だという。
日本が、必修化という形で英語を公立学校で教育することとなったことは、ひとつのターニングポイントになる出来事だと思う。英語は今、“コミュニケーションツール”とまで言われる時代に突入しているからだ。
また、言語というのは背景に文化を背負っているものだから、単にペラペラと単純なことが言えても仕方がない話である。教育というからには、何のために学ぶのかという目標と、学んだことの評価がしっかりとしないと指導は成り立たない。
 早期英語教育では、英語への意欲、関心、興味を醸成すべきであって、中等教育へのスムーズな導入への口火としての役割を果たしてもらいたいものだ。(了)
(月刊カレント 掲載)


 


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