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教育トレンド

 「国際学習度到達調査(PISA)」」で一五歳の学力の回復傾向

昨年(2,013年)後半に発表された、の「国際学習到達度調査」(経済協力開発機構・OECD調査・二〇一二年実施)では、日本の一五歳の学力回復傾向が明確になった。前回調査(〇九年実施)よりも、順位も得点も大幅にアップした。

この「国際学習到達度調査(PISA)」とは、世界各地の一五歳の子どもを対象に「読解力」や数学、科学の応用力の三つの分野の学力について三年ごとに調査するものである。世界の六十五カ国・地域の一五歳の子ども約五十一万人を対象とした国際的な学力調査である。今回、日本は「読解力」が八位から四位に、「科学的応用力」が五位から四位に、「数学的応用力」が九位から七位に上昇。また、三分野とも一位から四位をアジア勢が独占した。

最大の要因であるのは、ゆとり教育からの脱却路線が実を結んだ結果であるといえる。

九年前のPISAショックで、日本の教育関係者はかなりの危機感を抱いた。その結果教職員組合の要望も強くあって、それまではゆとり一色だったが、このショックで方向が大きく変わり、文科省内からもゆとり政策への批判が出るようになった。

これは、文部科学省内でも言われていたことで、文科省主催で経済協力開発機構(OECD)の分析官を招聘して、シンポジウムが開催されるなど、教育関係者のみならず、多くの日本人が今後の日本の教育状況につき懸念をしめしてもいた。

初回、〇〇年の学力調査では、日本の国際順位は数学的応用力が一位、科学的応用力が二位、読解力が八位とトップクラスだったが、〇三年調査で数学六位、読解力一四位と急落した。

おりしも、 文科省では昭和五〇年代後半から、学習内容を徐々に削減する路線をとってきた。そして、平成一四年には授業時間の三割削減と完全週五日制が導入され、本格的な“ゆとり教育”が始まった。

つめこみ教育の反省とか、ゆとりない学校教育の見直し等で、授業時間数の減少、教科書内容の減少などが行われていた。が、このPISAショックは大きく、教育政策の見直しを求める声が社会からも高まったのである。

■今回の復活を分析

今回の結果については、少人数による地道な指導などを続けてきたことが、成果を挙げてきているのではないかと分析される。調査は毎回、参加する国や地域の数が変わり、分野ごとの問題の数も異なるため、単純な比較はできませんが、日本の平均得点や順位は3つの分野すべてで前回の二〇〇九年を上回り、学力が二回連続で改善した。なかでも読解力は調査が始まった2000年以降で最も高い得点になり、順位も4位と、前回より4つ順位を上げた。また、科学の応用力は4位で順位を1つ上げたほか、数学の応用力も2つ順位が上がっている。

一方、今回、重点的に調査した数学の応用力への学習意欲について聞いたところ、数学を学ぶ意義や数学への興味・関心などを感じると答えた子どもの割合は低く、参加した六十五の国や地域の中で六〇位以下となり、学習意欲の低さが課題になっていることも明らかになっていることは、注意を喚起すべき点であろう。

 

■学習意欲は低い

その一方で、今回、重点的に調査した「数学の応用力」への学習意欲が参加した六十五の国や地域の中で低い順位だったことは、先進国ほど学習意欲が低い傾向があるため、日本ではさらに手厚いケアをして充実した教育の場を作ることが必要である。

今回の日本の結果について、この国際学力調査を開発し、現在も分析に関わっているOECDの教育・スキル局次長、アンドレアス・シュライヒャ―氏は「調査では、二十一世紀を生きる子どもたちに必要な、持っている知識を新しい状況に照らしあわせて活用する力があるかどうかを調べているが、日本の子どもたちはこの力が大きく改善してきている」と分析している。

そのうえで、今後、求められる力と必要な取り組みについて、シュライヒャ―氏は「社会がより複雑化し、急速に変化するなか、失敗しても何度でも挑戦していく力や、異なる価値観を理解する力、それにまだ存在しない仕事や技術を作り出して問題を解決していく力が求められている。そのためには、より質の高い教員を集めたり、子どもたちそれぞれの能力を引き出せるように教員の指導力を高めたりする態勢を強化していくことが必要だ」と指摘している。

■日本の推移

 日本の状況を分野ごと二〇〇〇年から二〇一二年について示すと、表の通りである。

2000年

2003年

2006年

2009年

2012年

点数

読解力

522点

498点

498点

520点

538点

数学的リテラシー

557点

534点

523点

529点

536点

科学的リテラシー

550点

548点

531点

539点

547点

順位

読解力

8位

14位

15位

8位

4位

数学的リテラシー

1位

6位

10位

9位

7位

科学的リテラシー

2位

2位

6位

5位

4位

 

二〇〇六年調査に関しては読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーのすべてで順位が低下した。(図録参照)。

二〇〇九年調査では、日本の順位が回復傾向にあった。また、新たに参加した上海、シンガポールを含め、アジア勢が上位を独占した点に注目が集まった。

二〇一二年調査では、日本の順位のV字回復が注目され、ゆとり教育の見直しの効果が現れた。アジアの儒教圏諸国の好成績が相変わらず目立っており、新規にベトナムも途上国の割にドイツ程度以上の高い得点を得た。

■アジアの好成績

また、アジアの儒教圏諸国の好成績が相変わらず目立っており、新規にベトナムも途上国の割にドイツ程度以上の高い得点を得た。地域参加の上海が二回連続で全三分野で一位を独占。シンガポールと香港が二,三位を分け合うなど、OECD非加盟のアジアの都市部が上位を占めた。一方、上位常連国のフィンランド、韓国が順位を落とすなど、変化も見られた。

アジア地域の台頭は、おなじアジアである日本は停滞してはいられないと言うことである。

OECDのアンドレア・シュライヒャー教育局次長は「保護者の職業や教育歴、家庭の裕福さを反映した「社会経済文化的水準」で見ると、日本では高水準校と低水準校の得点差が〇三年以降、拡大しており、教育の格差は一旦拡大すると、埋めることは非常に難しくなる。注意が必要だ」、という意見を指摘した。

今回、回復傾向を見せる学力調査ではあるが、これに安堵することなく、国内にうっ積する山積みの教育課題に真摯に取り組み、今後の一層の骨太の教育施策の実行が求められる。

(了)

 


 


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