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教育トレンド

高い資質の人材育成、日本の成長の鍵は教育にある 参議院議員・丸川珠代さんに子育て、教育問題を聞く

■ 女性の社会進出と育児支援 ■
 過日、今年のIMF総会が日本で開かれ、それを機に緊急レポートが出された。九項目のうち女性の社会進出と育児支援の話題があった。それに伴い、NHKの拡大番組では、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事が出演し、日本の女性の社会的役割につき述べた。

■就業率が低下するM字型曲線 ■
 日本の女性の生涯にわたる労働曲線を見ると、三十歳あたりから四十歳位にかけて就業率が低下するM字型曲線とよばれるカーブを描く。つまり、日本女性は結婚すると仕事を離れ、また子どもができると仕事を離れてしまうことが多く、一度正社員から離れると仕事への復帰もしづらい社会であるために、女性の労働力が生かせない国だ。この現象は先進国ではあまり見られない現象だ。

この期間に、他の先進国同等に女性が働けば、労働力不足に歯止めがかかり一人当たりのGDPが四%増えると推計される。IMFのリポートでは、日本では、女性の社会進出の実現に向けて二つのハードルがありその解決が重要だとしている。

 ■国際的観点から ■
まず、日本では女性の管理職や役員が国際的にみても極端に少ないので増加すること。日本における女性管理職の割合は約一割。 先進国では最低レベルだ。女性リーダーが増えることで、若い女性の手本となるモデルが増え、働く女性の増加につながると説く。

■家庭と仕事■
 次に、家庭と仕事の両立支援の充実が必要だ。時間に縛られることのない柔軟な働き方や保育サービスが整備されることが重要だ、出産後に仕事を辞めてしまう女性を減らすことができる、とリポートは分析する。日本の高齢化・少子化は、世界でも例を見ないほどの勢いで進み、就業者の“生産年齢人口”は今年から百万人単位で減少しており、近い将来、世界最低レベルになると予測されている。
日本の経済を立て直すには「女性をもっと活躍させるべきだ」という緊急リポートなのである。統計では日本の女性の労働参加率は六十二%程度で、これをG7並みの七〇%にすればGDPが〇・二五%上昇し、北欧並みの八十%にすれば〇・五%上昇する、とレポートで提言している。

■女性国会議員として 参議院議員の丸川珠代さん■

 は参議院議員の丸川珠代さんは、今年、子供さんを出産し、保育園に預けて通勤する。子を持ったことを感謝し、今まで社会を切り開いてきた多くの先輩の功績に感謝するという。この経験を国会議員としての仕事に強みとして生かし、切り開いていこうという強い意志を持つ。
 丸川さんの原点は、母子家庭で育つ自分を支えてくれた祖父母への思いと、教育を与え、生きる指針を与えてくれた医師である母親への感謝の心である。子育て・教育についてお話を伺った。以下、一問一答である。

■一問一答 家庭、子育て■

Q:日本の学力が低下していることをどう思いますか。
A:学校で子供に競争させないような風潮があるが、社会に出れば競争があることは当然のこと。先の社会で生きることを否定するような教育現場の在り方には、疑問がある。数学はダメでも、あの子はいい作文書くのよね、とか課外授業で輝いたりすることを、子どもどうしで認め合うことが大切。

だから、学校では課外授業とか文化祭などがあって授業の中の知識のみではない力の発揮の場所が多くあるのかと思います。
それより私が憂うることは、学力というより、根本的な“学習意欲に欠ける子供の増大”です。

いつかは子供は学校から社会に出ていくわけですが、大人なっても自分の活かし方がわからないとか、大学を出る年代になっても面接の受け方がわからないとか、履歴書がかけないとか、自分がどうしたらよいかわからないとかいう若者が多くなった。そういったことが、大きな問題です。

Q:PISAの結果でも成績が下がっていますね。
A:私の妹は学校では、「どうしてこうなの?」とよく質問する子でした。でも学校の先生は、彼女の質問に対して「いいから黙ってやりなさい」と。自己を否定されるようなことが多く意欲を失って落ちこぼれてしまいました。
 でも、アメリカに留学したら、全く違う。質問大歓迎。授業の進行を止めて皆がそれをきっかけにして議論する、質問を歓迎し、フォローし、認めてくれた。妹はそういう環境に出会い、学習意欲を刺激されてやる気を喚起し能力を伸ばせた。子どものなぜに答える余裕のない学校、現場の在り方は問題があります。

Q:いじめで自分の命を絶ってしまう事件がこのところ多い
A:子どもの居場所が学校と家庭しかないのが現状。町の友だち、第三の環境がほしい。

親だって子どものことをわかっているつもりでもわからない事がある。それを補う他者の視線があればと思います。私が中国の北京市内の学校に視察に行った時、教室に防犯カメラがありました。そのような事態に日本の学校がなってはいけない。いじめの深刻化は大人のストレス社会が子供に反映している結果だと思われます。

■人材育成の観点からみると
Q:教育のグローバル化について、どのようにお考えですか
今の大学は、「教える」という根本がなっていない。大学が優秀な人材を社会に送り出すという使命感が薄いのではないか。
 そして「日本を知る教育」が必要。アメリカの歴史の教科書を手にしたら、日本の教科書の三倍以上もの厚みがある。自身の国への誇り、事実を教育することはグローバル人材の育成には必須です。

目指すべきは「日本でないとこの質の高い人材を育成することができない」、という価値。ブラジル人でも、インド人でもいい、どこの国の人でもいい、誰でもできる、ということではなく、「日本人だからこそできる」という人材の育成が求められています。学力だけの観点ではない力、高い倫理観、道徳観、責任感といった日本人ならではの資質も含めて、全人的な教育の必要性があるということです。

Q:女性の社会進出について
A:女性を企業、仕事で活用する施策がより求められる。経済状況が厳しい折ですが、雇用を日本に残すために法人税の軽減など必須ですし、雇用の規制も緩和する必要がある。しかし企業が女性の力を生かすことは経済成長のために絶対必要なことです。女性の社会進出を図るには子どもを育てやすい環境整備が必須だと、子どもをもっていっそう具体的にわかるようになりました。
子どもを育てやすい環境整備も行政の重要な仕事。私が住んでいる港区の例ですが、産後のお母さんの心と体の ケアのため、産褥シッターさんの派遣制度がある。孤立しがちな子育てを支援するものです。

Q:家庭の役割とは
A:子どもには愛情を目いっぱい与えてほしい。子どもが一番つらく、悲しいことは親に相手にされないことだと思います。親は真正面から人格をさらけ出して、子と向き合うことが大切。「自分はこう生きてきた」、と生き様を見せることが、一番だと思います。(対談以上)

子どもは社会の宝であると実感しつつ、産み育てること、働くことが両立する日本を造るために議員活動にまい進している丸川さん。

先のNHK特集番組では、韓国では、二〇〇一年に国家公務員の三割を女性にして国を挙げて女性活用をしている。またLG社では一〇年前に一人もいなかった女性管理職だが、今は三人となって会社での実績をあげているとの報告も紹介されていた。
 IMF理事のラガルドさんは、自身が子育てを経験した実感から、女性が仕事に復帰するには二つの壁を乗り越えることが大切だと述べた。一つは、罪の意識を取り除くこと、二つ目は信頼おける人に預けられるかということだと述べていた。

例を見ない少子化、高齢化の進展する日本で、女性の力の活用、将来の人材育成はまったなしの課題だと改めて思った。(了)

(月刊カレント2013年1月号掲載 教育)


 


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