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教育トレンド

2020年度から学校にデジタル教科書が導入される

情報化時代の教材の在り方とはいかに

夏休みは、教育界にとっては来年度に使う教科書の採択作業が本格化する時期である。
教科書は、一度採択になる四年間は使われるため、今年度は高校一年生用だけが対象となるようだ。
教科書は、義務教育においては現在は無償化がされているので、公立小中学校の児童生徒にとっての費用負担は、現在においてはなくなっている。
しかし、採択教科書については最近、大手の教科書提供企業が、文科省の検定中の見本を採択委員に見せたとか、採択関係者に謝礼金を提供した等の、教科書会社の不祥事が相次いで発覚するなど、その採択、公正さにおいての疑問になるような事態が報道されている。
問題の概略は以下である。
今年の初め頃、教科書会社十二社が国の検定中の教科書を教員ら五千人余に見せて、そのうち一〇社が約四千人に謝礼を渡していた問題が起こった。
これについて、文部科学省は、学校で使う教科書の選定(採択)へ何等かの影響について調査をした。中には採択権を持つ自治体の教育長らにお中元やお歳暮といった品物を贈与した社もあった。
 文科省は各社に要請して、その結果を公表した。
それによれば、謝礼を渡していたのは業界最大手の東京書籍や、二〇一五年一〇月に問題が発覚していた三省堂などを筆頭に一〇社だった。内容としては公立小中の教員ら三千九百九十六人に、最高五万円の現金や数千円の図書カード、菓子類などを贈与していた。この一〇社のうち七社は謝礼を渡さなかった場合もあり、別の二社と合わせて合計で九社が、教員ら千百五十一人に、謝礼を渡しはしなかったが検定中の教科書を見せた。
 この他にも、数研出版が二〇一二年から二〇一三年度に、採択権者の教育長七人と教育委員三人の合計一〇人にお中元やお歳暮を贈与していたことも判明している。 これらの教科書会社の金品の贈与が、教科書の採択に直接影響しかねないとして問題視されたのである。同社によると、贈ったのは三千~四千円程度の品物であったと報道されている。名目は、地域の教育状況について話を聞くなど、お世話になったためだ、と回答があるようだ。
教科書を発行する数研出版(東京都本社)が、二〇一四年度に当時検定中だった中学数学の教科書を著者や監修者以外の複数の教員に見せて謝礼として数千円分の図書カードを渡していたことも報道されている。
 検定中の教科書は、教科書検定の規則などで外部に見せることが禁じられているもので、。同社では「ルール違反と知っていた。信頼を損なう行為で申し訳ない」として、同社の幹部が文部科学省を訪れて謝罪している。
 同社によると、一六年度から使われる教科書が検定中だった一四年度、複数の中学教員を公民館や貸し会議室等に招いて製作途中の教科書を見せた。目的は意見を聞いて作成に反映する、ということだった。
■問題の所在
教科書を見せること自体、文部科学省の検定実施細則で禁じられていることである。
公正取引委員会の調査では、九社が提供した金品は平成二十四年度以降、延べ千八百四十五人の教員らに対し、総額約千六百四十四万円ということである。教員らの二割以上は採択に関与する可能性があったという。
 これに対する教科書会社の弁明は「助言を受けた対価」などというものだったが、公正取引委員会は検定申請後の現金などの提供は、自社の教科書を選定するよう「勧誘するものだった可能性が高い」と指摘している。
この点は、だれが見ても利益誘導である行為だと思わざるを得ない。自社製品のシェア拡大などを図る行為であって、教科書会社のモラルを問われる問題である。
教科書には国費が投じられ無償配布される義務教育の教科書を扱うものであって、公正、信頼をもって臨むべき最たる場合なのに、ほとんどの教科書会社が利益誘導に関与していたとは呆然とする事態だと思う。
 従前よりの大手の教科書提供会社は、デジタル専門の技術ある企業と結びデジタル教材を開発する例が多い。コンテンツ、ノウハウと科学技術が結びつくことで可能な教材だからである。旧態依然とした中では、良質の教材開発は困難でもある。
■デジタル教科書時代になって
話を元に戻そう。
 現在の無償提供教科書は紙版の教科書のことである。しかし、情報化時代の今や教室では教師が教科書の内容を電子黒板に投影し、授業する「教師用デジタル教科書」が拡大の一途。現段階では児童生徒用のデジタル教科書を使用している学校は、少数派ではあるが、今後は利用せざるを得ないことは明白となる。
現在ではデジタル教科書は「補助教材」扱いで、で紙と併用であるがパソコンやネットワーク環境も徐々に整備されてきている。例えば、七月上旬に東京都内で今月開かれた展示会「教育ITソリューションエキスポ」の模擬授業で公開されたのは東京都内で今月開かれた展示会「教育ITソリューションエキスポ」の模擬授業であった。
小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトメンバーとして知られる宇宙航空研究開発機構(JAXA)の的川泰宣(まとがわ・やすのり)名誉教授が登場し電子黒板型プロジェクターの画面に映された中学校の理科の教科書を使い、惑星の画像などで宇宙について学んだ後、惑星探査機に関する記述部分が電子黒板に拡大された。画面に探査機や軌道の画像を映し出された臨場感あふれる授業。リアルな惑星探索画面がテレビを見るように映しだされているものだった。デジタル教材ならではの仕掛けであり、視覚に訴え、拡大縮小が自在に操れる画面は、紙教科書では表すことが不可能なものであった。こういった画像、映像、音響がデジタルの最大の特徴である。
■デジタル教科書の課題
 デジタル教材を当初は副次的教材として使用するとしても、その後の導入には内容の検定・著作権・コストなど課題は山積している。どこまでを検定の枠にするのか、著作権は紙であれば守備する範囲がはっきりしているが、デジタルでの利用となれば、簡単にコピーは可能であるしいくらでも拡散する。著作権でどこまでをカバーできるのか。
画像、映像、動画、音楽がデジタルの強味であり、コンテンツも教師や子どもが自在に操作できるのがデジタル教科書の大きなメリットであるが、動画や音声、リンクなど、どこまでを検定の対象とするかも課題であるし、検定が一年間で終えられるかどうかという現実的な課題も解決しなければならなくなり検定そのものの抱える課題も浮き彫りとなるであろう。 また、これらの膨大な費用は誰が負担するのか。
現在の紙教科書は無償での配布であるが、デジタル教材ともなると費用は膨大である。
当面は各自治体が負担という方向のようであるが、地域格差もでている昨今、俗福な自治体とそうでない自治体での普及格差も気がかりなことである。それは教育格差になってきはしまいか。
■現在の教科書
 教科書の検定制度も大きく変わることが必須である。このような時代の要請であるデジタル教材が、今後どのように取り入れられ児童生徒の教育に資するようになるか、試行錯誤の時期を迎えようとしている。そしてこれは世界の趨勢でもある。
デジタル教材が生かせる環境整備はもちろんのこと、指導教師の充実、デジタル教材そのものの開発研究は当然のこととして、利活用への道筋には、十分な教育予算を望むものである。
(了)

 


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