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教育トレンド

保護者の教育負担は家計の3割に ~私立大学生の家計負担

■地方から東京にすむ子どもに仕送り額は最低額に

日本は、保護者の教育負担がかなり大きい、ということはかねてから言われてきた。このたび、東京私大教育連合が発表した「二〇一四年度 私立大学新入生の家計負担調査」では、家計のほぼ三割が大学生の学費にかかっていることが判明した。

この調査は、二〇一四年の五~七月、東京都と神奈川、埼玉、千葉、茨城の四県にある十四大学の新入生の家計負担について四千三百三十件の保護者から回答を得た。(*調査の詳細は文末)

それによると、地方の保護者から首都圏に進学した大学生への仕送り額は今までの最低額と過去最低を更新。それでも、教育費用は家計を圧迫している。

自宅外通学者の「入学の年にかかる費用」は「税込収入」の三十三、四%となる約二百九十七万円で前年度と比べ二万四千百円(0、八%)増額となった。

父母・学生の裁量で送る「仕送り額(四月~十二月)」は、約八十三万円で前年度より八千七百円減額となった。保護者家庭の平均年収は約八百八十九万円なので、大学生が一人いると約三割は子どもの学費という計算となる。

一四年度の仕送り額は、新年度の特別出費が落ち着くだいたい六月以降の月平均額を出すと八万八千五百円で、前年度から五百円減じた。

この仕送り金額から家賃相当額を除いた残額が生活費用となる。三〇日で割った「1日当たりの生活費」は八百九十七円となり前年度を四〇円下回って過去最低を更新した。また、入学にかかる費用のうち、「受験費用」は二十五万二千六百円で、前年度より一万三千二百円増えた。

少子化で、大学側も学生募集には余念がないうえ、家庭は経済的にも浪人を選択することを避ける傾向があるため、一人当たりの受験件数が増加していうことが背景にあると見える。世帯の「税込年収」を住居別でみると、自宅外通学者の世帯で八百八十八万円、自宅通学者の世帯で九百十三万円であり、自宅外通学者では減っている。

■大学は学力低下に七割が懸念~ 漢字が読めない、分数ができない

さて、このように保護者の進学の先にある大学では、新入学生の学力低下を問題視する大学が七割以上に達する、という。

授業をしてみたら、学生の学力低下があまりにもひどく、補修をしている大学もある。「学力低下が問題になっている」と回答した大学は、全体の約七十六%ある、これが「私立大学」に限ると約八割が学生の学力に懸念を示している。

これは「高大接続に関する調査」(ベネッセ教育相が追う研究所調べ)で、調査は二〇一三年一一月~一二月、全国の全日制高校(中等教育学校を含む)校長千二百二十八人と大学の学科長二千十二人を対象に郵送で実施したものである。

いずれも国公立より私立に多い傾向がみられるというから、私大の今後は重い課題をもっている。

筆者も全国規模予備校の進学コース担当の講師に話を聞いたことがある。講師の話を総合すると

「予備校では大学に合格させるために、偏向しても構わないから、その子の受験のための科目に力をいれる。高校でも、浪人生がでることは避けたい。

また、AO入試、推薦入試で早めに入学が決まった高校生はその後、勉強はしなくなって三月に高校を卒業してしまう。医者になるために医大にいこうとかの目標があればその部分だけはやむなく勉強はするが、試験に受かるために医学を志すのに生物を取らずに点数のいい物理を選択するという学生もいるから本末転倒。また、AO入試で容易に入学先ができてしまう場合はそこで勉強することをやめてしまう。知的好奇心のある学生は減少する。大学も入学生徒の学力が低いのでレベルがさがっている」という。

漢字が読めない、簡単な分数さえもできない、英語が訳せないまま推薦入学やAO入学で入学ができてしまうようだ。加えて、一般入試を行う高校生たちも競争率も低い中での受験で済んでいるため、学力はなくてもはいれる大学に入るためどちらにしても学力がなくても済んでしまう、ということだ。

話を戻すが、調査では大学では「学生間の学力差が大きく、授業がしづらいこと」が「問題になっている」とした大学は、全体の約六十八%。「国立」では役四十六.八%、「私立」は約七十七%と、公私で大きな差がみられた。

■大学の半数が「高校までの学力が不足」と回答

一方、入学者の学力や学習状況についてたずねた結果では、「高校の教育課程で身につけるべき教科・科目の知識・理解が不足している学生」が「半数以上」と回答した大学は約三割で「三割くらい」とぼかした回答も約四割あったが、ほぼ七割が学力に懸念を表明している。

「大学の専門分野を学ぶ上で必要な教科・科目を高校で履修していない学生」については、「半数以上」が約二割、「三割くらい」が三十五%。「基本的な学習習慣が身についていない学生」では、「半数以上」が約三割「三割くらい」が三十六%となった。

いずれの項目でも、「半数以上」とした大学は国公立よりも私立の方が多かった。特に「高校の学力が不足している学生」が「半数以上」とした割合は、「国公立」が約一割に対し、「私立」は約四割に上った。

大学が最高学府であるためには、単に入学できればいい、ということではない。学生は、入ってからの学問への真摯な向き合い、同志との切磋琢磨、よい師とのであいによる学問の探求をすべきである。

筆者は教育費用へのかなりの財政負担が必要との意見を持つ、つまり奨学金充実や家計助成を望むものであるが、それは一定の学力が保障されてのことである。学ぶ意欲ある者に対してであり、意欲なく学力ないことは論外である。

大学進学率が上がったといっても、高等学校までの学力が伴っていない生徒が増加しても、中身はない。先ごろ、東大に合格してもその七割の人が入学を辞退して他の海外の有力大学に行ってしまった、というニュースが話題となった。東大とはいえ、学問内容、授業内容、環境が選ばれる内容でないと世界で伍して戦う人材から、そっぽを向かれてしまうのである。大学のさらなる改革、高校の授業内容の強化、と課題は山積みである。

(了)

 

*調査票は「私立大学新入生の家計負担についてのアンケート」で調査の対象

二〇一四年度に私立大学(短期大学を含む)に入学した新入生の家庭(保護者・父母)を対象とした。

対象大学は、一都四県(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城)にある左記の十四大学である。

東 京(9校) 工学院大学、中央大学、東京経済大学、東京家政学院大学、日本大学 、明治大学、明治薬科大学 、和光大学 、早稲田大学

神奈川(1校) 麻布大学

埼 玉(1校) 獨協大学

干 葉(2校) 国際武道大学 東邦大学

茨 城(1校) 筑波学院大学


 


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