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教育トレンド

大学淘汰の時代、規制緩和と私大は定員割れで苦境

■規制緩和と大学

日本には二〇一四年(平成二十六年)五月現在で、七百六十八校の大学(大学院大学を含む)、三百六十四校の短大が存在する。ここ二十年ほどの期間に、大学の規制緩和が進み、新設の私立大学が増加、学部学科の改変、増設が相次いだ。

文科省は、規制緩和の一環として大学や学部などの新設認可などの弾力化した代わりに「設置計画履行状況等調査」(アフターケア)を設置し、大学がきちんと設置計画を実行しているかどうか、大学の設置認可時等における留意事項及び授業科目の開設状況、教員組織の整備状況、その他の設置計画の履行状況について、各大学からの報告を求め、書面、面接又は実地により調査を行い、各大学の教育水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として毎年調べている。平成二十五年の状況が先ごろ発表になった。

それによれば、大学は設置したものの、当初計画時にニーズ調査や競合分析を行わず、入学定員を根拠なく設定したことから、学部学科等が開設して以来、入学定員の未充足が続いている大学や、他方、入学定員を大幅に超えた学生を受け入れた結果、学生の教育環境の質の低下が強く懸念される大学もあった。

対象となった大学も含めて七十七大学の新設学部・学科(九十五件)に、充足率が七割未満の定員割れ、あるいは教育環境に問題が出るほどの定員超過があると指摘された。

定員割れを指摘された学部・学科は人文・社会系が多い一方、定員超過は医療・看護系が多い。さらに百十八校の大学・短大の学部・学科で、学校が定めた定年年齢を過ぎた教員が多数いるなど教員年齢構成に問題があることなども指摘された。定員割れなどは、設置計画段階での学生募集計画の見通しの甘さも大きな原因だと思われる。

これらの内、教員不足で教育課程が計画どおり実施されていない、図書館など施設・設備の整備が計画どおり進んでいない、定員割れが長期化しているなど、特に大きな問題があると思われる三十六大学・短大、十五大学院の延べ五十一校の学部・学科(五十六件)に対して、改善計画を要求した。指摘された事項は、「当初の理念や計画を実現できる体制や教育研究の継続性に疑義がある」「推薦入試について、入学者が募集人員を大幅に上回っている」「入学者選抜機能が働いているとは考えられない」などである。

■苦境の私学経営

学生が定員割れをすることで深刻なのは、私立の大学・短期大学を経営する六百十九の学校法人のうち、四十二%に当たる二百六十二法人の帰属収支差額がマイナスに陥っていることだ(二〇一一年度)。半数近くの私立大学が赤字経営で、倒産する大学もでている状態だ。

これは少子化による十八歳人口の減少が大きく影響しており、一九九二年に二百五万人だった十八歳人口は、二〇一二年には約四〇%減少し百十九万人となった(文部科学省「学校基本調査」より)。その間、大学設置基準の緩和で一九九二年には五百二十三校しかなかった大学が、二〇一二年には一・五倍の七百八十三校へ増加した。

子どもが増え大学進学率が上昇し続けていた時は問題はなかったが、人口減少し大学が増加するのでは当然の帰結である。大学の健全運営ができているのは、大学の他に資金背景を持つようなケース(たとえば、宗教法人団体があるとかや食品の生産工場などがある場合)が大学の生き残りに影響するという。

 ■大学の今後

大学改革においては、近年、国立大学と私立大学の境界線が低くなってきているのも特徴だ。国立大の授業料は私学にちかづくくらいに値上がりを続けており、また国立大学法人が従来なかったような施策を打ち出す例である。一年ほど前、都内で行われた大学広報セミナーで和歌山大学(小田章学長、和歌山市)が設置した観光学部も、そうした流れの中のひとつだった。観光学部の設置は国立大学法人として初めてのことだった。 「和歌山大学最大のオンリーワン戦略は観光学部の設置」という基調講演を行い、国立大学法人のトップ自らが生き残りを話した。

講演の要約をすると「大学の独立行政法人化が新制大学誕生以来の大きな出来事で、日本の高等教育の将来を左右する程の重要さを持った制度改革。これで純粋な国立大学がなくなることになる。私は、法人化移行を厳粛に受け止め、今まで以上に社会から高い評価を得られる大学に変貌せねばならないと肝銘している」ということだった。国立大学でも淘汰の波の中、私大においての改革と、今後は厳しいものがある。

すでに、私立大学は、新学部学科の設置やキャンパスの大幅移転、男女共学化、留学生受け入れ増加、など施策を次々と打ち出してきているところだ。私大は、創立の精神にその教育観のすべてが凝縮する。それが国立大学と異なる存立基盤となって魅力を放つところが大きな差異であると筆者は思う。大学教育をどう舵取りをするかは、国の命運もかかると肝に銘じなければならない。(了)

 

 

 


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